『ポレポレ』“pole pole”
とはアフリカの言語のひとつであるスワヒリ語です。
「ゆっくりゆっくり」「ぼちぼち行こう」という意味です。
(決して宗教がらみではありません(^_^;))
私がかつて、ケニアにサファリ旅行をしていたとき、
現地の人たちは、目が合うとあいさつのように
“pole pole”と声をかけあっていました。
赤茶けた土ぼこりを巻き上げて走る古いジープ
激しい風を受け、おじぎをしたままの樹々、
カラカラの砂漠に転がっている干からびた動物の白い骨、
遠くに見える川を、ゆっくりと渡る像たちの群れ、
その群れに必死でついていく小象の小走り、
インパラの残骸に群がるハゲタカの雄叫び、
そして、線香花火の最後の火玉が解け落ちるような夕日・・・。
野生動物だけでなく、
文明の違う人間たちの介入によって、
実際そこに生きるアフリカの人々も、
そんな容赦のない自然の摂理、
そして、人間の欲にもまれて生きてきた
過酷な歴史と現状を抱えています。
争っても抗いきれない、嘆いても悲しみの消えない、
そんな答えの出ない現実の中でも生きていかなくてはいけない、
そんなアフリカの人たちが生み出した
呪文のような響きをもつのが、
“pole pole”という言葉ではないでしょうか。
私たちは、変えられるものを変える勇気を持つことが必要なときもあります。
一方で、変えられないものを受け入れる勇気が必要になるときもあります。
どちらの勇気を持てばいいのか判断がつかないときもあります。
そんなとき、逃げでも妥協でもなく、“pole pole”とつぶやき、
自分を大きな何かに委ねたり、
自分のこころに耳を傾けるときがあってもいいのではないでしょうか。
しかし、私たちは様々な事情によって
そんな“pole pole”な時間を阻害されてしまっているものです。
いえいえ、もしかしたら無意識に自ら阻害されるような環境を選んでいるのかもしれません。
本当に“pole pole”な状態とは、
「信頼している誰かに見守られながら、安心してひとりの時間を過ごす」
ということでもあります。
カウンセリングとは、二人で居ながらも “ひとり”でいることができる能力や自信を取り戻すプロセスでもあります。
“pole pole”の反対語は、急ぐという意味の“haraka”という言葉だそうです。
スワヒリ語のことわざに
“Haraka haraka haina baraka“(ハラカ ハラカ ハイナ バラカ)
「急ぐと神の祈りが存在しない」
というものがあるそうです。
これぞ、“pole pole”の神髄を語っています。
日本語には、急がば回れ、などという言葉もありますが、
時間に追われ、人生のルーティーンに自動的に進められている私たちだからこそ、
せめて今、このきっかけで “pole pole”とつぶやき、あなた自身を慈しむ時間を持ってほしい・・・
という願いを込め、この言葉の響きを、カウンセリングルームの名称にお借りしました。
そして、あなたの中から奏でられる“pole pole”という響きが、
あなたの周囲に静かにゆっくり、波及することを信じています。